解決事例
固定残業制度の導入
お客様企業概要
- 業種:飲食業
- 従業員数:約800人
- 店舗数:全国約120店舗
経緯
いわゆる「日本マクドナルド事件判決(店舗店長に対する残業代の支払い命令)」を受け、今まで「管理監督者」として残業代の支給対象外としていた店舗店長の処遇について何らかの改善に迫られていた。
提案内容
- クライアント企業の店長は、権限等において労働基準法上の管理監督者として認められる可能性は低いが、クライアント企業における管理職であることは間違いないため、通常通り残業代を支払うのではなく、賃金の一部を固定残業代に移行する「固定残業制度」の導入を提案した。
- 制度が適法に運用されるため、固定残業代を区分し、何時間分の残業代であるかを明確化し、その旨就業規則の改正も行った。
- 移行のタイミングは昇給時期とし、各店長から個人毎の固定残業代を含む賃金改定につき、全員から同意を得るまでサポートした。
制度導入の効果
- 各店長に、「時間=賃金」ではなく、「能力=賃金」という考え方が浸透し、一国一城の主として、従来以上に責任感や裁量性を持って店舗運営が行われるようになった。
- 制度導入前に管理監督者と認められなかった場合は、店長の平均労働時間に基づく残業代が月7万円となるため、店長120人で計算すると、月840万円、年1億円のリスク回避に成功した。
高齢者賃金再設計シミュレーション
お客様企業概要
- 業種:総合病院
- 従業員数:約300人
経緯
クライアントからある社員について、63歳から年金満額の受給権発生に伴い、賃金を下げようと考えているが、一方で、年金等を含めた「手取り金額」については、出来るだけ下がらないようにしてあげたいとの相談を受けた。
提案内容
厚生年金保険からの在職老齢年金や、雇用保険からの高年齢雇用継続給付が最大限に利用できるように賃金再設計を提案した。
社員データ
- 昭和22年1月○日生まれ 男性 扶養家族1名(妻)
- 60歳到達時登録賃金月額:446,700円(上限)
- 62歳時賃金 月給450,000円 非課税通勤手当5,000円 60歳以降賞与なし
- 現在、賃金が高額であるため特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分)は全額支給停止、高年齢雇用継続給付は受給不可の状態
- 平成22年1月○日に63歳到達(特別支給の老齢厚生年金:報酬比例部分に加え定額部分の受給権発生)
- 63歳からの年金額
報酬比例部分:1,300,000円
定額部分:700,000円
加給年金:400,000円
社員手取額・会社人件費シミュレーション
■社員手取額シミュレーション(単位:円)
項目 | 62歳 | 63歳 |
現行 | 提案 | |
月給 | 450,000 | 300,000 |
非課税通勤手当 | 5,000 | 5,000 |
在職老齢年金※ | 0 | 98,000 |
高年齢雇用継続給付※ | 0 | 20,000 |
支給額計 | 455,000 | 423,000 |
健康保険料 | 19,223 | 12,270 |
介護保険料 | 2,796 | 1,785 |
厚生年金保険料 | 36,904 | 23,556 |
雇用保険料 | 1,820 | 1,220 |
所得税(給与) | 12,280 | 5,240 |
所得税(年金) | 0 | 0 |
控除額計 | 73,023 | 44,071 |
差引(本人手取額) | 381,977 | 378,929 |
■会社人件費シミュレーション(単位:円)
項目 | 62歳 | 63歳 |
現行 | 提案 | |
月給 | 450,000 | 300,000 |
非課税通勤手当 | 5,000 | 5,000 |
会社負担分保険料等計 | 64,085 | 41,051 |
人件費計 | 519,085 | 346,051 |
【注意事項】
- 上記シミュレーションは試算当時のものであり、また、全て月額に換算してある。実際の支給は、在職老齢年金、雇用継続給付とも2ヶ月単位の支給となる。
- 社員手取額シミュレーションの※印は端数処理を行っており、実際の支給額とは若干異なる。
- 社員手取額シミュレーションの控除欄には、住民税やその他控除等は含んでいない。
- 社員手取額シミュレーション健康保険料及び介護保険料は、全国健康保険協会(東京支部)の保険料率により計算。
賃金再設計の効果
年金の支給停止ラインや高年齢雇用継続給付の支給・不支給ラインを的確に読むことにより、試算の結果、本人の手取りは3,000円程度、年間36,000円しか減額されないのに対し、会社人件費は月173,000円、年間2,070,000円のコスト削減となった。
人事労務フルアウトソーシング
お客様企業概要
- 業種:外資系アパレル業
- 従業員数:約700人
- 店舗数:全国約120店舗
- 従来から労働社会保険手続き、労務相談の受託クライアント
経緯
クライアント企業は全国に多店舗展開しており、労働社会保険手続きなどの窓口は本社人事部で行っている。労働社会保険手続きは当法人にアウトソーシングしていたが、その後の健康保険証・離職票の発送や、給与・賞与明細書等の各店舗や社員宅への発送業務に非常に手間が掛かっていた。また、契約社員などの期間雇用者も多く、雇用契約書の作成・発送業務にも相当の時間が費やされていた。
受託業務内容
発送方法等の細かな業務範囲の打合せを重ね、次の付帯人事業務を受託することとなった。
- 健康保険証・離職票等の社員自宅への発送業務(簡易書留郵便)
- 給与・賞与明細書の仕分け・各店舗への発送業務(簡易書留郵便)
- 退職者(予定者)の給与・賞与明細書の自宅への発送業務(簡易書留郵便)
- 契約社員等、期間雇用者の雇用契約書の作成・所属店舗への発送業務(給与明細書に同封)
フルアウトソーシングの効果
- クライアント人事部において、付帯人事業務のフルアウトソーシングにより、人事のコア業務に費やす時間が増加した。
- 当法人においても、クライアント担当者の具体的な業務の流れや大変さが理解でき、より顧客視点でサービスの提供に努めるようになった。
有力健康保険組合への編入
お客様企業概要
- 業種:外資系小売業(海外有名ブランドの関連日本法人)
- 従業員数:約80人
- 健康保険:協会けんぽ
提案内容
新規クライアントで健康保険は協会けんぽからスタートしたが、比較的高賃金で平均年齢も若いため、業種的に該当する健康保険組合をピックアップし、メリットを比較の上、有力な健康保険組合への編入を提案した。
ターゲット健康保険組合の加入条件
- 業績条件:3期連続黒字
- 公租公課:過去1年間滞納無し
- 社員数:50名以上
- 平均年収:450万円以上
- 平均年齢:36歳以下
- 扶養率:0.6人以下
編入の効果
- 様々な審査をクリアし、厚生労働省から編入が認可された。
- 健康保険組合の保険料率の低さから、年間の健康保険料(介護保険料)が、従来は労使合計約3,000万円だったものが約2,500万円となった。これは、保険料率の改定に伴う若干の変動があるものの、売上に換算すると相当な効果があった。
- 健康保険料(介護保険料)が安くなることで、各社員の手取額も増加した。
- 健康診断の年間費用も、従来は会社負担額約100万円が、約14万円まで削減された。
- 各種給付にも付加給付がつき、また、健康保険組合の保養所の割安利用等が可能となり、社員の福利厚生の充実につながった。
外資系企業のエクスパッツの給与計算
お客様企業概要
- 業種:外資系教育支援業
- 従業員数:約100人
エクスパッツとは
海外の本・支店、関係会社等に所属のまま日本に派遣される労働者のことを、一般にエクスパッツ(Expats)という。派遣が長期の場合は、日本の社会保険法や税法が適用されるが、本来、エクスパッツ負担の社会保険料、所得税、住民税等を日本の会社が負担するケースが多いのが特徴。この場合、会社が負担する本人分の社会保険料額等を給与として処理し、さらに経済的利益に該当するため課税処理を行う必要がある。給与計算は手取保障契約(ネット契約)となり、社会保険料や所得税等を何度もシミュレーションし、支給額をアップさせるいわゆる「グロスアップ計算」を行う必要があり、給与計算は非常に煩雑になる。
入社時のグロスアップ計算
エクスパッツの入社に際し、例えば、クライアントから手取り50万円で社会保険手続きと給与計算依頼があると、社会保険料、雇用保険料や所得税等の控除額を加味し、手取り50万円となるよう支給額を設定の上、社会保険等級(標準報酬月額)を決定し、会社の総負担額を算出する。
次に、本国親会社の承認により、はじめて社会保険手続きを行う。但し、承認がおりず手取額が変更になる場合は、特に固定控除額である社会保険料(健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料)の再設定により当初のシミュレーションがすべてリセットされてしまうため、さらに1から何パターンかのシミュレーションを行う必要があり、社会保険手続きまでに相当の労力を要することもある。
グロスアップ計算の時期
手取保障契約ということは、社会保険料等の控除額の変動の都度、グロスアップ計算を行い、手取額を確保する必要がある。また、変動手当である残業代が支給されるような場合は、雇用保険料・所得税も変動してしまうため、毎月グロスアップ計算を行う必要もある。定期的に計算を行う時期としては、主に次のようなケースがある。
- 4月:基本給等昇給、雇用保険料率・健康保険料率・介護保険料率の改定
- 6月:住民税(初月)
- 7月:住民税(2ヶ月目以降)・賞与計算
- 8月:4月昇給に伴う随時改定(月変)による社会保険料の変更
- 10月:定時決定(算定)による社会保険料の変更
- 12月:賞与計算
随時:介護保険該当、各種手当の追加・金額変更、残業代支給時、税法上の扶養人数変更、所得税率改定等
特殊なグロスアップ計算
エクスパッツに対しては、様々な複雑な計算を要することが多々ある。例えば、エクスパッツが母国に一時帰国する費用は、手取保障で会社が負担するのが通例のため、この場合もグロスアップ計算を行う必要がある。支給範囲や金額等により取り扱いは異なるが、雇用保険は福利厚生として認められ対象外となり、社会保険と所得税は対象賃金として賞与計算を行い、社会保険料や所得税が掛るのが一般的である。この計算は、例えば、一時帰国費用が30万円であれば、一時帰国手当を30万円に設定し、社会保険料や所得税の控除額を加味して手取額が30万円になるよう調整手当をグロスアップする計算を行う。次に、調整手当は福利厚生ではないので、調整手当のみに雇用保険料率を乗じて雇用保険料を算出する。この時点で手取額は30万円を下回るため、さらに何度かのグロスアップ計算を行い、手取額30万円を算出する必要がある。
外国語給与明細書の発行
給与支給時にエクスパッツ等の外国人が受け取るものといえば、給与明細書がある。システムへの個別登録や、通常の給与明細とは別の印刷設定等を行う必要があり、作業としては煩雑になるが、クライアントからのニーズにより、英語やフランス語等、本人の母国語での給与明細書の発行も行っている。
エクスパッツ給与計算の効果
当法人担当者は、特殊かつ複雑な計算が非常に多いため、給与計算に関する労働社会保険法、税法及び関連通達に精通することができ、正確・迅速な給与計算処理を達成している。
地位特定者の普通解雇案件
お客様企業概要
- 業種:IT関連
- 従業員数:約100人
経緯
パフォーマンス(営業成績・勤務態度・責任者としての姿勢)が悪い支店長について、従来から様々な相談を受けていたが、最終的に解雇したい旨の相談があった。また、当該支店長は、「地位特定者」として認められる可能性もあった。
地位特定者とは
地位特定者とは、前職で高い業務実績があり、同様のパフォーマンスを期待され、「支店長」「営業部長」等の管理職として地位を特定されて採用された者のことをいう。通常は、能力不足の解雇は余程のことがない限り認められないが、地位特定者の場合は、職務内容に対する具体的な能力不足や、目標未達成が普通解雇事由として認められる可能性が高い。
提案内容
- 就業規則の普通解雇事由に、地位特定者のパフォーマンス不足を追加規定すること。
- 今後は、地位特定者の採用に際し、労働契約書に「支店長」等の地位を特定して雇用する旨や、会社が望む具体的な職務内容・目標数値等を明記しておくこと。なお、今回のケースにおいては労働契約書にその旨の記載はなかったが、業務指示書等により、具体的な職務内容や目標数値等を書面により本人に指示すること。
- 本人の落ち度については、成績に関しては具体的な数字を、態度や姿勢については、具体的な出来事を記録に残し、事態によっては、始末書を取っておくこと。
- 改善指導無しに突然解雇することは認められないため、改善が必要な事項については、適宜指導等を施し、また、指導内容についても記録を残し、併せて本人から改善計画を提出させること。
交渉経過
- 改善が芳しくなく最終的に解雇通知を出すも本人拒否
- 本人が合同労組へ駆け込む
- 通常、解雇無効に関する団体交渉は、労働者優位に展開されるため、条件を提示した上での合意退職の線も考慮したが、従来のからの布石もあるため、徹底的に争うこととし組合要求を拒否
- 相手側がクライアント企業を提訴
交渉結果
当法人のアドバイスも効果的に機能し、原告側の主張は認められず、クライアント企業が全面勝訴で決着する。
定休日:土曜・日曜・祝日