会社法、金融商品取引法の制定以来、企業の内部統制、法令遵守(コンプライアンス)がますます重視されるようなり、また、CSR(Corporate Social Responsibility=企業の社会的責任)など、高い倫理性も企業に求められるようになりました。そのような背景から、従来から確立している「会計監査(企業決算に対する外部機関による監査)」に対し、企業経営の根幹をなす「人」の視点から、社会慣行、職業倫理まで含めた広い意味での法令遵守状況等を評価する「労務コンプライアンス監査」に注目が集まりつつあります。
労務コンプライアンス監査とは、就業規則を始めとする人事労務関連の諸規程、労使協定、法定帳簿、労働社会保険手続き等の整備・運用が適法に行なわれているか否かを監査するもので、形式的側面(書面から判断される整備状況)と実態的側面(書類間の整合性やヒアリング等から浮き彫りになる実際の運用状況)という二つの側面から行なわれます。
監査項目は多種多様ですが、この二つの側面を、最も身近な例として36協定について説明すると、「36協定の締結・届出が適法に行なわれているか否か」が形式的側面であり、「時間外労働が、締結された36協定の内容の範囲内で行なわれているか否か」が実態的側面と言うことができます。
グリーンシート制度とは、非上場企業の株式等の売買のために、日本証券業協会が平成9年7月に開始した制度。非上場企業の有価証券については、証券会社が投資家に投資勧誘を行うことが原則禁止されているが、公開企業並みの情報開示(ディスクロージャー)が継続的に行われる企業に限り、審査をクリアすればその勧誘が許される。許可された非上場企業の銘柄を通称「グリーンシート銘柄」と言い、同協会が公表する。この審査に、「法令遵守状況を含めた社会性」という項目があり、ここで「労務コンプライアンス監査」が有効となる。